仮想通貨MUONは、分散型のオラクルネットワーク「Muon Network」で利用されるトークンです。2022年8月にプレセールで売り出され、この記事を書いている2023年4月2日にはIDOが実施されています。
ただし、一般向けのトークンローンチはまだ先であり、その日程は未定です。
購入できるのが先になりそうなMUONですが、人気プラットフォームの「DAO Maker」に選ばれたということで調べてみました。
価格の方向性の考察はこちら(よくわからないという結果です、、)
仮想通貨MUON(Muon Network)とは
出典:Muon Network
仮想通貨MUONは、「Muon Network」が発行するトークンです。Muon Networkとは、スマートコントラクトへの情報伝達等を行う「オラクル」と呼ばれるサービスを提供します。
概要は以下の通りです。
公式サイト | https://www.muon.net/ |
プロジェクト名 | Muon Network |
トークン名 | MUON |
ジャンル | インフラ |
対応チェーン | イーサリアム、BSC、ポリゴンなど |
「Muonの由来は”無音”?」と期待したのですが、由来は不明でした。
Muon Networkは、以下を実現するためにオラクルサービスを提供しています。
- ブロックチェーンの相互運用性の向上
- メタバースのセキュリティ向上
- フィードの処理速度の上昇
上の「フィード」とは、別のプログラムに情報を自動で伝達するプログラムやWebページのことです。(参照①、参照②、参照③)
フィードは仮想通貨取引所でも使われています。例えば、取引所はBTC価格を表示する必要がありますよね。そこで、取引所はBTCのリアルタイム価格を、どこかから取得して配信します。
開発チーム
公式サイトからで紹介されている開発メンバーを紹介します。
Reza氏
Reza氏はMuon Networkの創設者の一人であり、チーフエンジニアです。経歴等は不明です。
Lafayette Tabor氏
Lafayette Tabor氏はMuon Networkの創設者の一人であり、役職は「Visioneer」です。Visoneerの意味は調べてもよくわかりませんでした、、
ググってみるとリンクドインやMediumのポストが見つかります。「DEUS Finance」というプロジェクトの運営メンバーもしているようです。
Theo氏
Theo氏もMuon Networkの創設者の一人です。ストラテジストとして活動しています。経歴等は不明です。
The Router氏
The Router氏は総務マネージャーとしてMuon Networkに参画しています。経歴等は不明です。
パートナー
Muon Networkは複数のVCやDeFi関連プロジェクト、ゲームプロジェクトとパートナーシップを結んでいます。日本でコミュニティを形成している「KudasaiJP」もパートナーに含まれています。
プロダクト
Muon Networkのプロダクトは3種類です。
ALICE Testnet
ALICE TestnetはMuon Networkのテストネットです。2023年1月19日から稼働していて、一般公開されています。
開発者やユーザーが新機能を試す際に利用できます。
Pioneer Network
Pioneer Networkは2023年の中旬にローンチ予定のカナリアネットワークです。カナリアネットワークはテストネットとメインネットの中間に位置していて、より本番に近い環境で実験するのに活用されます。
ちなみに、有名なカナリアネットワークにKusamaがあります。Muon NetowrokにとってのPioneer Networkは、PolkadotにとってのKusamaのような存在とも言えます。
カナリアネットワークの由来は炭鉱夫の活動です。炭鉱夫はカナリア(鳥)を炭鉱に放つことで、有毒ガスの充満度合を調べていたそうです。(参照)
Pioneer Networkでは、Muon Networkのセキュリティレイヤーが実装されます。また、独自仮想通貨のPIONが使われ、PIONはリアルな価値を持つトークンとなります。
Muon Network
Muon Networkはメインネットであり、全ての機能が利用できるようになる予定です。一部機能はメインネットでのみ利用できるようにする予定で、メインネット公開後もPioneerは存在し続ける方針です。
ユースケース
Muon Networkのユースケースをいくつか紹介します。
ちなみにオラクルとは、他のチェーンやオフチェーンの情報をスマートコントラクトに提供したりするサービスでしたね。これを踏まえてユースケースを見ていきましょう。
プライスフィード
プライスフィードとは、価格を配信するサービスです。
Muon Networkは「担保額を正確に計算するには、不正情報を検出し、配信を阻止する必要がある」と、レンディングプラットフォームにおけるプライスフィードの重要性に言及しています。そして「Muon Networkなら不正なデータ配信を防げる」とアピールしています。
クロスチェーンブリッジ
クロスチェーンブリッジ等が機能するよう、Muon Networkは異なるブロックチェーン上のスマートコントラクトに情報を提供できます。
Muon Networkはブリッジを狙ったハッキングに触れ、セキュリティの重要性と同サービスのセキュリティ性能をアピールしています。
マルチチェーンでのセールやエアドロ
Muon Networkはマルチチェーンでのセールやエアドロ実施にも役立ちます。
マルチチェーンでのセールやエアドロはユーザーにとっては都合が良い企画です。しかし、プロジェクト側にとっては難しいことでした。獲得可能額が決まっているセールやエアドロでは、複数チェーンで購入されることを防ぐことが難しいためです。
Muon Networkは分散型な方法で上記の課題解決に貢献します。
ロードマップ
公式ページで確認できるロードマップは以下の通りです。
2023年 | Pioneer Networkのローンチ |
時期の記載なし | DAO MakerでのIDO実施 |
時期の記載なし | カナリアネットワークのローンチ |
時期の記載なし | メインネットと仮想通貨MUONのローンチ |
時期の記載なし | Muon DAOのローンチ |
上記のほか、ホワイトペーパーには「直近のマイルストーン」という項目があり、そこにも箇条書きで達成すべき内容が書かれています。しかし、具体的な日付はありません。
ロードマップとチームメンバーに不透明感がありましたね。
仮想通貨MUONのトークノミクス
仮想通貨MUONの使い道や放出計画などを見ていきたいと思います!
トークノミクスは健全に感じました。
MUONの価格チャート
2023年4月3日現在、仮想通貨MUONには市場価格がついていません。
MUONの使い道
仮想通貨MUONの役割は、Muon Networkの参加者のインセンティブとなることと、ネットワークの価値を最大化することです。
そして具体的な使い道として、以下の4つが記されています。
ノードのオペレーション
ノードはレスポンスとして返す内容を検証して、不正なアクティビティを検出します。ノードがあるおかげでMuon Networkは正常に稼働できるため、Muon Networkはコミュニティに対してノード運営を促したいと思っています。
そこで活用されるのがMUONです。ノード運営者は、ネットワークの正常化に貢献することで、報酬としてMUONを受け取れるという仕組みです。
なお、ノードを運営するには、MUONを一定量担保として預ける必要がありますので、MUONの価格安定にも繋がると考えられます。
ネットワーク手数料
Muon Networkを利用する人は、手数料をMUONで支払います。手数料のMUONはノード運営者に分配されます。
流動性
MUONはCEXやDEXへの上場を予定しています。
DEXへは流動性を提供して、報酬(MUON)を得ることが可能となる見通しです。そこで、報酬獲得のために流動性としてMUONを提供する、といった使い方もできます。
ガバナンス
Muon Networkは、Muon DAOを立ち上げて運営の分散化をする予定です。
MUONはガバナンストークンとして用いられる予定なので、ガバナンスの参加権としても機能します。
割当と流通計画
以下はトークンの割当と流通計画です。
出典:Muon Network
「プレセール」「IDO」「初期投資家への割当」は属性が似ているため、1つに括ってみました。また「運営チーム報酬」「パートナー報酬」も1つにまとめました。
この状態で割当が多い順に見てみたいと思います。
30%:エコシステム報酬(黄緑)
グラフの黄緑部分は、ノード運営者や他のネットワーク活動のインセンティブとして使われます。全体の30%を占めます。
4〜10年をかけて徐々に放出されていきます。
25%:運営とパートナーの報酬(黄&オレンジ)
グラフの黄色部分は運営チームへの報酬と、オレンジ部分はパートナーやアドバイザーへの報酬です。あわせて25%を占めます。
黄色とオレンジの部分はローンチから1年間はロックされます。そして2年目から4年目の間に、徐々にロックが解除されていきます。
19%:プレセールなど(明るい紫&深紫&青)
グラフの底にある明るい紫色は、コミュニティプレセールで販売された分、暗い紫色部分は初期投資家への分配、青色はIDOで販売された分です。合わせると19%になります。
トークンローンチ時、これらのうち10%のみがロック解除された状態です。2年目の頭から3年目の頭にかけて徐々にアンロックされます。
17%:流動性やLPへの報酬(緑)
グラフの緑色部分はCEXやDEXに提供する流動性と、流動性提供やステーキングをした人への報酬として使われます。全部で17%です。
徐々に流通量が増えていき、1年5か月目に全ての割当分が放出されます。
9%:マーケティングと予備資金(ピンク)
グラフのピンク色部分はマーケティングやキャンペーン、予備資金として使われます。9%を占めます。
ローンチから1か月以内に利用されます。しかし1年目はあまり使われず、主に2年目に利用されます。
放出計画のまとめ
改めて仮想通貨MUONの放出計画を見てみたいと思います。
出典:Muon Network
MUONは合計10億枚であり、48か月(4年)で全て放出される予定です。
トークンローンチ時の流通数量は全体の4.45%です。ローンチ4週目になるとエコシステム報酬とキャンペーン用割当が流通し、7.4%となります。その後は、エコシステム報酬と流動性分が増えて、2年目の最初には全体の30%がリリースされます。
2年目から3年目にかけては、プレセールでの販売分や運営チームとパートナーへの報酬分が徐々に放出されます。またキャンペーン用のトークンも利用され、3年目の頭の報酬割合は90%を超える予定です。
3年目から4年目はエコシステム報酬のみが増えます。
トークンの増減
バーンやMUONのミントのメカニズムは見当たりません。そのためトークンの流通量は、一定額で保たれます。
Muon Networkの優位性
オラクルサービスは、「Chainlink」やCosmos基盤の「Band Protocol」も提供しています。他のオラクルサービスと比較して、Muon Networkは魅力的なのでしょうか。
ということで、公式サイトで記載されていたMuon Networkの優位性を紹介します。
技術者ではないので具体的にはわかりませんが、記載のあった内容を紹介します!
パーミッションレス
Muon Networkは特定の管理者の判断に依存しない点(パーミッションレス)をアピールしています。
今日のオラクルの多くは、稼働するための許可を必要とします。大したことのない許可であることもありますが、許可を要するということは中央集権的な性質を持つということになります。
一方でMuon Networkは完全に分散化されており、アプリの実装やノードの稼働、トークンのリスティングを行う際に許可は不要です。
セキュリティ
セキュリティの高さも強みとして記載されています。
多くのオラクルはセキュリティを高めるために、マルチシグの方式を採用しています。しかし、マルチシグにもデメリットがあります。マルチシグは複数の秘密鍵で署名する方式なので、要求する秘密鍵を増やすことでセキュリティを向上させると同時に、処理にかかるコストや時間を増やしてしまうのです。
そこで、Muon Networkは独自のセキュリティレイヤーを実装します。これにより、セキュリティとコストとスケーラビリティの3つともを高水準にする予定です。
セキュリティ構造の詳細はこちら。
フレキシビリティ
Muon Networkの強みの3つ目は、フレキシビリティ(柔軟性)の高さです。
多くのオラクルはプライスフィードやトークンブリッジなど、予め設定された機能を提供するようにデザインされています。
一方、Muon Networkではプロジェクトチームが独自のオラクルを開発し、それをMuon Network上に配備することができます。
その他のアピールポイント
MUONは2023年4月にDAO MakerでIDOを実施します。そのDAO Maker内には、ホワイトペーパーに無かったことも書かれていたので、紹介してみたいと思います。
DAO Makerの説明は以下から確認できます。
関連記事:What is Muon Network (MUON)?
おそらく古い情報なのですが一応紹介!
処理速度が早い
Muon Networkはブロックチェーンではないので、データをずっと保管しておく必要がありません。そのため、高い処理速度を実現できます。
対応チェーンが多い
記事中の画像を見ますと、以下チェーンに対応していることが示されています。
- イーサリアム
- アバランチ
- BSC
- XDAI
- ポリゴン
- FTM
分散計算
Muon Networkの技術を利用すると、あらゆるWeb3のアプリケーションは、複数の計算処理を実行できます。
まとめ:最初の2年間が勝負か
仮想通貨MUONの価格は、Muon Networkがどれだけ多くのプロジェクトに使ってもらえるかによって変わります。ホワイトペーパーを見た限りでは技術的な強みもあるようです。
技術的な部分を買われて幅広く利用されればMUONの価値は高まると予想できます。しかし、僕は技術的な知識がないためMuonの技術が画期的かどうかわからず、、、Chainlinkなどの競合からシェアを奪えなければ厳しそうです。
トークンの放出計画的には、ローンチから最初の2年間が勝負なのかなと感じました。1年目は比較的売り圧力が少なそうですが、2年目になるとアンロックされるプレセール分やパートナー企業割当分が増えていき、キャンペーンでも利用されていきます。
補足:そもそもオラクルとは
Muon Networkはオラクルに関するサービスなので、Muon Networkを調べるための準備として、オラクルの基本を見てみたいと思います。
簡単に言うとオラクルとは、オンチェーン環境(現実世界)と、オフチェーン環境(ブロックチェーン内)の橋渡し役です。
出典:Chainlink(一部加工)
前提として、スマートコントラクト単体ではオフチェーンにあるデータにアクセスできません。でも、オフチェーンの情報を参照したくなったら困りますよね。そこで、橋渡し役としてオラクルを使っているというわけです。
また、オラクルはスマートコントラクトに渡すデータの有効性(正しい方法で提供されたか)も検証してくれるみたいです。
オラクルの活用事例
オラクルのイメージをつかむために、活用事例を見てみたいと思います。例えばオラクルを使うと、以下のようなことが可能になります。
- Aさんは巨人ファン、Bさんは阪神ファンである
- Aさんは巨人の勝利、Bさんは阪神の勝利に賭ける
- 二人はスマートコントラクトに1万円分ずつ預ける
- 試合後、どちらかが2万円分を受け取る
上の「4」ではスマートコントラクトが作動し、巨人が勝つとAさんが、阪神が勝つとBさんが2万円を受け取ります。やるかどうかは別としてこういったことができます。
オラクルの種類
どんな働きをするかによってオラクルは分類されます。いくつかの分類を説明したいと思います。
ソフトウェア vs ハードウェア
オラクルは、「ソフトウェアオラクル」と「ハードウェアオラクル」に分けられます。
まず、ソフトウェアとハードウェアの意味について、用語解説サイトの略称『わわわ』さんの説明をお借りすると、「ソフトウェアとはコンピュータのうち蹴っ飛ばせない部分、ハードウェアとは蹴っ飛ばせる部分」です。
わわわさんはよく使わせていただいてます。
本題ですが、ソフトウェアオラクルとは、プログラムやAPI(プログラムを外部から利用する窓口)といった、ソフトウェアから情報を収集するオラクルで、最も良く使われるタイプです。仮想通貨の市場価格を取得するオラクルもソフトウェアオラクルになります。
一方ハードウェアオラクルは、「RFID技術」などを活用したハードウェアから情報を受け取って、スマートコントラクトに提供するオラクルです。ICOCAなどの交通系ICカードは、かざすと情報をやり取りできますが、そのような感じで物体を近づけて情報を収集するタイプになるのかなと思います。
中央集権型 vs 分散型
オラクルは「中央集権オラクル」と「分散型オラクル」に分けることもできます。
中央集権型オラクルは、主に1つの組織やプロジェクトに管理されるオラクルを指します。管理体制はシンプルで効率的ですが、以下のようなデメリットもあります。
- 提供されたデータが妥当かを検証しづらい
- 特定のサーバがダウンするとネットワークが止まる
- スマートコントラクトが持つ分散的な性質を薄める
一方で分散型オラクルは、特定の中央管理者がいないオラクルです(明確な定義はなさそうです)。
分散型のオラクルの代表例に「コンセンサスオラクル」があります。コンセンサスオラクルは他の複数のオラクルからデータを収集することで分散性を高めます。
ただし、分散型oracleは、安全性と機能性を両立させた方法で実装するのが難しく、中央集権的なオラクルのほうがハイパフォーマンスな傾向にあるようです。
インバウンド vs アウトバウンド
オラクルは「インバウンドオラクル」と「アウトバウンドオラクル」に分けることもできます。
インバウンドは外から内への通信という意味です。インバウンドオラクルはその名の通り、ブロックチェーン外からブロックチェーン内に情報を配信するオラクルです。
一方、アウトバウンドは内から外への通信であり、アウトバウンドオラクルはブロックチェーン内からブロックチェーン外に情報を配信します。
クロスチェーンオラクル
クロスチェーンオラクルは、別のブロックチェーン上のデータを取得・伝達するオラクルです。イメージとしては、イーサリアムのスマートコントラクトの稼働状況を、ソラナのスマートコントラクトに伝えるといった感じですかね。
クロスチェーンオラクルはクロスチェーンブリッジなどに活用されます。どのように役立つのでしょうか。イーサリアム上のUSDTをソラナに移すときを例に考えてみます。
- イーサリアム上のスマートコントラクトにUSDTをロック
- ロックされたことをソラナ上のスマートコントラクトに伝達
- ソラナ上のスマートコントラクトがUSDTをミント
クロスチェーンオラクルは上の例の「2」を担当します。
補足:Muon Networkのセキュリティ
Muon Networkは3層からなるセキュリティレイヤーを有します。3つの層はそれぞれ単独では不十分なものの、合わさることで高いセキュリティ性能を発揮します。
出典:Muon Network
Muon Networkが配信するのは3層を突破したデータだけです。
それぞれどのようなものか見ていきたいと思います。
- Threshold Network
- Optimistic Network
- Shield Server
Threshold Network
DappからThreshold Networkにデータ収集リクエストが出されると、1つのノードがデータ収集を担当します。その後は以下のように収集したデータをチェックして、配信します。
- 他のノードに収集したデータを送信
- 他のノードは送信されたデータを確認
- 問題なければ、収集を行ったノードに署名権を与える
- 一定以上の署名権が集まったら、データをレスポンス
Optimistic Network
第2層であるOptimistic Networkは、以下のように機能します。
- 1つのオラクルがデータを取得する
- 取得したデータは15分など、一定時間確認可能な状態にする
- 一定時間他のノードが、不承認しなければ配信可能に
「十分な間公開されていて何も指摘がないなら、それは問題ないデータだ」というわけですね。
Shield Server
Shield ServerはDapp側が運用するサーバであり、Threshold NetworkとOptimistic Networkを通ってきたデータを再確認します。
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